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もちろんプレイステーション内蔵のメモリもEDOであることは説明を待たない。 部品点数削減の本当の狙いこうしたKの技術的な仕掛けは、実際には、ほぼ一〇〇パーセントの確率で的中するのである。
まずハ−ドの部品点数が激減した。 九四年一二月にテイクオフした第一号機SCPHI-〇〇〇の部品点数は七五O点だった。

それが第二号機SCPH13〇〇〇(九五年七月)では六五O点に、第三号機SCPH|3500(九六年三月)を経た、第四号機SCPH15〇〇〇(九六年六月)では五五O点に、そして第五号機SCPH|7〇〇〇(九七年一一月)では四五O点にまで、急カ−ブで部品点数を削減することができた。 しかも、いずれのモデルも外見はまったく同じである。
結局、中身の部品点数は、当初に比べると半分近くまで、削減された。 宣伝部のEはある時こう思ったという。
「ウチには、なんでハ−ドが一種類なのに、あんなにたくさんのエンジニアがいるんだろう」。 その疑問は、プレイステーション機のフタをあげて新旧を対比させてみると、解くことができる。
部品点数をここまで落とすことができたのは、前述したスマート・アーキテクチャの成果の一つである。 量産すればするほど、コストがさらに低下するようなアーキテクチャをあらかじめ仕込んであるから、部品の点数を削減したいという要求、および大量生産を可能にする生産性の向上要求に、柔軟にこたえることができたのである。
ここで独特なのが、部品削減の目的である。 一般に部品削減はコスト、ダウンのために行われるものである。
ところが、Kの発想は違った。 「コストよりむしろ生産性向上が目的」だった。
プレイステーションの発売当初は、生産されるハ−ドの数も月産三〇万台と、ソニーにとってはさほど大きな数ではなかったので、既存の工場の設備や、ちょっとした追加投資で事足りた。 ところが、これが月産七〇万台規模になってくると、同じ規模の部品実装機では生産能力が不足してくる。
これはチップ・プレーサーという、大変高価な生産設備であり、第一に追加設置しようにも、体の生産立ち上げに数カ月もかかってしまうものだった。 これに対処するために、Kは部品点数の削減を命じたのだ。
立ち上がって行っても、生産そのものの能力が足りないので、対応できないという事態になってしまう。 これに、海外市場が加わると大変な数になるだろう。

Kはそれを予期して、継続的な部品点数の削減を計画したわけだ。 それを実行したのは、田尻彬(現・SCEI常務取締役技術本部長)である。
この意義を理解すると、彼はまさにチ−ム一丸となって、この部品点数削減に挑んだ。 そして、着実に実行に移し達成して行った。
「安い部品でも一〇〇個使うと、そのための生産設備が必要になり、当然生産スピードも落ちます。 ところが一〇〇個の部品が一個に統合されるなら、その分の生産設備は必要なくなり、工程も単純化して生産スピードが飛躍的に上がるんです」(田尻)。
さらに田尻はPC基板に目をつけた。 一般に基板の進歩というと、基板を多層化し、表面にこれまでより多い部品やICを実装できるようになることを指すが、田尻が考えた基板の進歩とは、その逆、簡略化である。
当初は困層の両面基板だった。 それが次に二層の両面基板になった。
しかし、部口聞が基板の両面に実装されていた。 これを片面のみの実装に変え、生産性を大幅に向上させた。
次には、この状態で基板サイズを縮小し、現在ではそれまでの三分のこの大きさの一一一×一九センチの基板になっている。 ここでも当初のプレイステーションのアーキテクチャの簡素な美しさが効いたことは、言うまでもなくゲームのハ−ドは、そのプラットフォームが生きている限り、勝てるゲ−ム機をいかにつくるかアルゴリズムの知恵作り続けられる。
だからハ−ドの仕様の中に、将来の発展の可能性と、が必要なことは言うのを待たないが、コスト、ダウンの仕掛けを持たなければならない。 それには「先見」まさにKの先読みあってのプレイステーションであった。
「大量生産」という命題は、デザインの観点からも追求したことだ。 デザインを一貫して担当したのがソニーのG禎祐(ソニー・コーポレ−トデザインセンター/ア−トディレクター)である。

基本的なデザインの話はひと先ずおくとして、彼の発想の特異な点は、「大量生産を可能にするデザインとは何か」を徹底的に考えたことである。 Kは半導体の調達から、この視点を持った。
Gはデザインをその命題に沿わせた。 現代の優れた工業デザイナーは、単に形や素材を考えるだけでなく、その生産性までが守備範囲となる。
その典型がGである。 「大量に作ることが前提ですから、ました」。
できるかぎり構成を簡単にし、なるべく単純に、目をつむっていても作れるような形と構成にし工場のラインで数分に一台の割合で作るというのが目標だったといGは、積極的に生産現場に入っていった。 技術者と共に検討し、たとえ、そのデザインが技術的に無理だと言われでも、決してあきらめない。
それどころか、技術的にどのようなことをやれば、イメージしたデザインが貫徹でき、しかも生産性が上がるのかを、技術者と一緒になって追い求めていった。 九四年秋。
初出荷を控えて、ソニー木更津工場はプレイステーションの製造に大わらわだった。 ところが、このままでは品不足に陥ることが分かり、大騒ぎになった。
それはコントローラーの件である。 本体は一二月に三〇万台体制で生産が進んでいるが、コントローラーについては、当初は本体付属だから三〇万台分を確保すればよいという計画で進んでいた。
ところが、ふと考えたら、倍の数量は用意しなければならないことに気付いた。 対戦ゲ−ムは二人で戦うわけだから、つまり倍の数はいるのである。

Gは博然とした。 物がないし、追加して作るにもスケジュールが間に合わない。
このままでは絶対に足りなくなるのは明白だった。 では、どうしたのか。
普通のデザイナーなら、物が足りないと言われでも、それはデザイナーの関知する問題ではないと答えるところだが、Gは違った。 生産現場に入り込み、何が問題か、何が素早い生産を可能にしていないのかをつかむまで、現場を離れなかったのである。
そこで、Gは何をしたのか。 コントローラーの成型の絞り工程には、当時一分かかっていた。
これを五O秒に短縮するなら、なんとか、生産が追いつくことが分かった。 ところが、単純に一O秒縮めると、表面に光沢が出て、質感が損なわれる。

これが出ないようにするにはどうしたらよいか。 それは金型の温度や圧力を微妙に調整しなければならないことになった。
Gは工場に出向き、金型の担当者に直接、頭を下げ、「お願いします」と言った。 「本社に座っていて、電話で頼んだだけではこちらの思いなんか、伝わりませんよ。
どうしても時聞を短縮したいが、それによってデザインが損なわれるのは困るというなら、直接、工場に行かなければ…。 職人さんととことん膝を割って話し合いをすれば、必ず分かってもらえますよ。
そうしないことには、良いものはできません」。 コントローラーの印刷文字の黒が浮いて、字が読みにくいという不都合もあった。

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